※登場人物は全て仮名です。
朝8時。アラームを3回スヌーズした後、慌てて起きた美咲(42歳)は、洗面台の前で深いため息をついた。
鏡に映る自分の顔。ほうれい線、毛穴の開き、たるみ。どれも「まだ大丈夫」と言い聞かせてきたが、もう限界だ。
洗面台の下の引き出しを開けると、そこには美顔器の墓場が広がっていた。超音波洗顔ブラシ、EMS美顔器、RF温熱美顔器、イオン導入器。どれも購入時は「これで人生変わる!」と意気込んでいたのに、今や埃をかぶっている。
「使えばいいのよ、使えば...」
そう思いながらも、仕事から帰って夕飯を作り、片付けをして、お風呂に入って、それから洗顔ブラシを充電して、EMSのジェルを塗って、終わったら拭き取って、次はRFで...と考えただけで、もう無理だった。
結局、簡単な洗顔とオールインワンジェルを塗って終わり。これが美咲の毎日だった。
「エステ、行きたいなあ...」
でも、月に2回通える時間も予算もない。1回18,000円のフェイシャルエステは、美咲にとって「たまの贅沢」でしかなかった。
会社のランチタイム、同僚の香織が興奮気味にスマホを見せてきた。
「ねえねえ、これ見て!すごくない?」
画面には、SNSで話題になっているらしい美顔器の動画が流れていた。ELEKI LIFTという名前の、なんだかゴージャスな見た目の美顔器だ。
「また美顔器?もういいよ、私、家に4台あるし」
美咲は冷めた目で答えた。
「でもこれ、1台で15役できるんだって!洗顔から、EMS、RF、イオン導入、全部これ1台!」
「はいはい。多機能系は大体中途半端なのよ。専用機には勝てないって」
美咲は鼻で笑った。だって、今まで何度も「これ1台で完璧!」という謳い文句に騙されてきたのだ。結局、専用機を買い足すことになる。それが美容家電の真実だった。
「そうかなあ...口コミめっちゃいいけど」
香織は不満そうにスマホをしまった。
その日の夜。ベッドに入った美咲は、なんとなくスマホでELEKI LIFTを検索してみた。
すると、タイムラインに次々と現れる使用動画。
「ちゃんとダブル洗顔した後なのに、こんなに汚れが...」というキャプションとともに、茶色く汚れたコットンの写真。
「エステ月2回→ELEKI LIFT毎日で、逆に肌が良くなった」というビフォーアフター。
「専用機3台持ってたけど、全部メルカリで売った。これ1台で十分すぎる」というレビュー。
美咲は思わず身を乗り出した。
価格を見る。58,000円。
「高っ...」
でも、ちょっと待て。美咲が持っている美顔器を合計すると、軽く9万円を超えている。しかも、ほとんど使っていない。
エステは月2回で36,000円。年間だと432,000円。
電卓アプリを開いて計算してみる。
ELEKI LIFTが58,000円。エステを月1回に減らせば、2ヶ月で元が取れる。
「...いや、でも」
美咲は自分に言い聞かせた。
でも、指は勝手にスクロールを続けていた。
「お風呂で使える防水仕様。洗顔しながら全部できるから10分で完了」
「15種類のモードを、その日の肌悩みで使い分けられる」
「超音波42,000Hz、サロン級EMS、RF温度調整3段階」
時計を見ると、午前2時を回っていた。
3日後、美咲の家に大きな箱が届いた。
「あー...買っちゃった...」
後悔と期待が半々の気持ちで箱を開ける。
中から現れたのは、想像以上に高級感のあるゴールドとホワイトの美顔器。付属品も充実している。説明書を読むと、確かに15種類のモードが搭載されていた。
洗顔モード、毛穴ケアモード、リフトアップモード、温感モード...。
「本当に1台でできるの?」
半信半疑のまま、その夜、お風呂で試してみることにした。
まず、クレンジング後に洗顔モードを起動。超音波の振動が心地よい。いつも通り洗顔したはずなのに、コットンには茶色い汚れが...。
「え、嘘...これ、私の肌から出てきたの?」
驚きながらも、次はリフトアップモード。EMSの心地よい刺激が頬を持ち上げる。今まで使っていたEMS美顔器より、明らかにパワーが強い。
そして温感モード。じんわりと温かいRFが肌に浸透していく。
気づいたら、10分が経っていた。
「...あれ?もう終わり?」
いつもなら、洗顔ブラシを出して、ジェルを塗って、EMSを当てて、拭き取って、RF用のクリームを塗って...と45分かかっていたのに。
しかも、疲れていない。むしろ、気持ちよかった。
鏡を見る。たった1回なのに、肌がワントーン明るくなっている気がする。
「...いや、気のせいよね」
でも、翌朝、会社で香織に会った瞬間、言われた。
「美咲、なんかファンデ変えた?肌がツヤツヤしてる」
それから、美咲の生活は変わった。
毎日、お風呂でELEKI LIFTを使うのが習慣になった。面倒くさくない。むしろ、楽しい。
今日は毛穴が気になるから毛穴ケアモード。 今日は疲れてるから温感モードでリラックス。 週末だからリフトアップモードでしっかりケア。
15種類のモードがあるから、飽きない。ゲーム感覚で、毎日違うケアができる。
そして3週間後、美咲は洗面台の下の引き出しを開けた。
超音波洗顔ブラシ、EMS美顔器、RF温熱美顔器、イオン導入器。
「...ごめんね」
美咲はそれらをメルカリに出品した。すぐに売れた。合計で4万円になった。
さらに、月2回通っていたエステを、月1回に減らした。エステティシャンに「肌の状態がすごく良いですね、何かされてます?」と聞かれた時、美咲は堂々と答えた。
「ELEKI LIFTっていう美顔器使ってます」
「あー!今、SNSですごく話題のやつですよね!確かにサロン級の機能ありますもんね」
エステティシャンまで知っていた。
会社でも、香織だけでなく、他の同僚たちからも「肌きれいになった?」「何使ってるの?」と聞かれるようになった。
美咲は、もはや伝道師だった。
「あのね、ELEKI LIFTっていう美顔器があってね...」
休憩室で、美咲の熱いプレゼンが始まる。
同僚たちは興味津々で聞いている。
「私も買おうかな...」
「絶対買った方がいい!人生変わるから!」
美咲は断言した。
3ヶ月前、洗面台の前で深いため息をついていた自分が嘘のようだった。
今、美咲の洗面台には、ELEKI LIFT 1台だけが、誇らしげに置かれている。
毎日、お風呂の時間が楽しみだ。今日はどのモードを使おうかな、と考える時間が、美咲にとって最高の癒しになっている。
スマホには、また新しい通知が来た。
「美咲さんのおすすめで買いました!本当にすごいですね!」
香織からのメッセージだった。
美咲はニヤリと笑って、返信した。
「でしょ?私たち、もっと早く気づくべきだったよね」
洗面台の鏡に映る自分の顔。
3ヶ月前とは、明らかに違う。
ほうれい線が薄くなり、毛穴が目立たなくなり、肌にハリが戻ってきた。
「やっぱり、続けるって大事なのね」
美咲は、ELEKI LIFTを手に取り、今夜のケアを楽しみにしながら、仕事へと向かった。